#3魂が旅立つ神聖な地、ケープレインガ。マオリのスピリチュアルな神話を追って[NZ縦断シリーズ#3]

ニュージーランド


灯台への道。進むにつれ、風と波の音が徐々に強くなる

ニュージー最北端の場所とよく説明されているケープレインガ。
本当は最北端ではないんだけど、地の果てにやってきたと感じる場所です。
ここは灯台が有名ですが、マオリの神話では、死後の魂が“ハワイキ”という場所へ帰るために通る、神聖な旅立ちの地でもあります。

ニュージーランドの北にある突き出たファーノースという半島は、根元にあるカイタイアという町から先端の岬まで約110km。
この道のりを長い時間をかけて車で走ると、本当に遠くまで来たんだなと実感します。
ケープレインガまで運転される方は、ガソリンの残量に気をつけましょう。

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[#3NZ縦断の道のり]



はじめに

ケープレインガはファーノースの先端であり、タスマン海と太平洋が出会い、衝突し合う場所であり、マオリの神話の土地でもあります。そんな魅力あるケープレインガですが、この記事では主にマオリの神話を追いながら進めていこうと思います。

神話は語り部により内容が違う場合がありますが、ここではwikiと現地にあった看板の説明を元に執筆しています。

ケープレインガは終わりであり、始まりでもある

丘から灯台を見下ろす

ケープレインガは終わりであり、始まりでもあります。
それは死者の魂にとって、アオテアロア(ニュージーランド)の最後の土地であり、魂の旅の始まりの場所でもあるからです。

マオリの伝説によると、そもそもマオリの先祖は、1000年前にハワイキというところから、カヌーに乗ってニュージーランドにたどり着いたと伝えられています。そして死後、魂はもと来たハワイキに向かって帰っていくのです。そのハワイキへの旅の出発地点がこのケープレインガになります。

ケープレインガにたどり着いた魂のゆくえ

この丘の下には2つの泉がある

命の水 “Te Waiora a Tane”

上の写真の丘の下には2つの泉があります。ひとつは “Te Waiora a Tane (Living waters of Tāne) ” 、Taneの命の水と呼ばれる泉で、死者の魂の清めを象徴しています。この命の水は、マオリの埋葬の儀式にも使われます。

しかし、時代の変化によりキリスト教信者の人口が増えるにつれ、この泉を貯水池として使おうということになりました。しかし間もなく泉は消え、崖の底に再び現れたため、貯水池は意味をなさなくなったと言われています。

霊的な世界への分岐点 “Te Wai Whero o Rata”

もうひとつの泉は “Te Wai Whero o Rata” で、この水を飲んだ魂は、霊的な世界 (spiritual world) へ進んでいくことができます。もし魂がこの水を飲まなかった場合、その魂は生ける者の世界(the land of the living)へ戻っていくことになります。

死後の世界の入り口

半島の先端に突き出た場所が、ハワイキへの旅の出発地点

写真の右側にある海に向かって突き出た場所が、 “Te reinga” 死後の世界への入り口です (the place where the spirits enter the underworld) 。この岩には古代の樹 “Te Aroha” がぶら下がっていて、魂はこの樹の根っこでできた階段を下りていきます。そこには “Te Ara Wairua (Spirits’ pathway) ” と呼ばれる「魂の通り道」があり、彼らの霊的なふるさと (spiritual home) であるハワイキへの旅が始まります。

魂は最後に一度振り返る

ケープレインガの先端。天気がいいと Three Kings Island が見える。

魂たちは、ハワイキへの道を進みますが、岬の先にある Three Kings Island で一度立ち止まって振り返り、アオテアロアの最後の見納めをした後、旅を続けます。

神話は多くの謎に包まれている

白波が切り立った崖に打ち寄せる

ハワイキやテアロハなど、ハワイを連想させる言葉が並びますが、これは実際のハワイを示しているわけではありません。
しかし、ハワイの先住民もニュージーのマオリやタヒチ、サモアなどと同じポリネシア系。文化や言語もとても似ていて、ハワイキを表す他の国の言葉は、ハワイ諸島では「ハワイイ」、タヒチでは「ハヴァイイ」、ツアモツ諸島などでは「ハヴァイキ」、クック諸島では「アヴァイキ」、サモアでは「サヴァイイ」などとなっています。

このように、地域は違えどそれぞれの国で同じ島を表す言葉があります。しかし、その島が具体的にどこにあるのかということはわかっていないそうです。

参照 「ポリネシア人」wiki

神話の魅力

手前にある丘は一息つくにはちょうどよい場所

僕がマオリの神話に惹かれるのは、その物語がメタフォリカル(隠喩的)であり、シンボリック(象徴的)であるからです。

良い物語は鏡のように読み手自身を映し出し、見る者によってさまざまな印象を与えます。
それは物語が形を変えるからではなく、読み手の中にあるものが引き出されることによって、読み手にとって大事な何かを感じ取ることができるからです。

僕がこの神話を読んで面白いなと感じたことは、この土地に長く住むマオリでも、ここ(ニュージーランド)で生きていることを一過性のものとして認識していることでした。ここに立っている僕も、このニュージーの地には一時的な滞在者です。しかし、この地がいつか通り過ぎてしまう場所であったとしても、愛おしく思っている。だからこそ、魂は一度自分が生きた場所を振り返るんだと思います。

ハワイキからこの土地に来て、いつかはハワイキへ帰っていく。しかし、ハワイキへ向かうことが目的ではない。この真ん中にある束の間の“今ここ”に生きている。

そんな印象を受けました。

魂が旅を始めるこの場所を後にし、またいつもの生活へ戻っていきますが、自分が感じた物語性を忘れずにいたいと思います。
忘れちゃうんだけどね。まぁ、その時はまたここへ戻って来よう。

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